最初の決断
1991年、新卒で入った会社の5年目の春。そして、新人が入ってくることもあり、人事異動が行なわれた。僕は営業所の所長になった。前任の所長は本社営業部に戻った。
言ってしまえば、前年は僕らの営業所の「独り勝ち」状態だったが、もちろん新しい一年は全社的な伸びが必要だ。前所長もテコ入れをして本社営業部を立て直さなければいけない。そこで前所長のことを分かっていて、一緒に頑張ってくれる営業社員を連れて行きたいという話が持ちかけられた。
営業所営業部の営業マンは当時4人。新人賞を獲得したAと、そのライバルのような存在のB、職人のようなC、細かいことを積み重ねるDだ。
新人賞を獲得したAは基本的にはほったらかしておいても良いタイプ。「やる!」というモチベーションも高く、失敗しても後を引かない。
Bは、実績こそAには及ばなかったがモチベーションは安定しているタイプ。他の社員を触発したりする影響力はAよりも大きく、明るい。
Cは真面目なコツコツタイプ。言葉も少なく、その見て分かるような実直さで仕事を進めるが、否定的な考え方に陥りやすい所がある。キッチリと行なうことに価値を置く反面、既成概念にとらわれると、もう一歩踏み込むことに躊躇うタイプ。
Dは素直にやってみるタイプ。独特の工夫をして仕事を進める。一方で、不安を覚えたりして心が揺れることが多い。
Aは大らかな反面、ちょっとヌケてる性格、Bはイケイケ!ドンドン♪だから、二人とも必要に応じて、相手先の状況や商談内容、フォローの取り方に目を配ってやれば良い。
ちょっと気が緩みそうならガツン
とキツイことを言っても、却って燃えるし、こちらの挑発に乗って結果を出せる。
それに比べるとCとDは、もっと目配りと配慮が必要になる。ガーッと突っ走っていくA・Bとの差異に意気が落ちたり、諦めを覚えたり、場合によっては「この仕事を続けてて良いのか」と退職の考えがよぎることもある。
実務的なところだけでなく、心の状態にも目を配る必要がある。事実に即して誉め、取った行動を叱り、時に焚きつけたり、なだめすかしたり、だ。
でも、決してひねくれてる訳じゃないし、むしろ素直な方だ。あれこれ考えてしまうのも普通だろう。
さて、誰を本社に行かせたら良い?
誰が本社に行くのが、本社、営業所にとって、そして、本人たちにとって良い?
営業所にとってみればAとBは稼ぎ頭だ。オマケにどちらも手がかからない。新しい一年の売上数字を考えると二人とも営業所に欲しい。
だが二人と、CかDの一人を残すと考えるとバランスが悪い。
脇目をふらずに実績を出す二人に囲まれて、C・Dのどちらかが引け目を感じそうだ。
組織としてのまとまりに欠ける気がする。
前年度の新人賞を獲得したAを本社に渡すことを僕は決めた。
Aは周りに左右されにくい。新しい場所で力を発揮するならBよりもAだろう。前所長も傍にいる。本社営業部に新しい空気を持ち込めるかも知れない。
新人も配属になり、新しい体制での一年が始まった。
時は1991年。後に「バブルがはじけた」と言われる年だ。
いよいよ・・・である。
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